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DX・内製化

経理の自動化を安全に進める方法|シャドー運用で一致率を測ってから

目次

経理や請求のように間違いが許されない業務の自動化では、「動くものを作る」ことがゴールではありません。本当に難しいのは、その自動化を信頼していいと証明することです。

RENOYでは自社の経理業務に、AIが仕訳を分類して自動登録する機能を作りました。技術的には、作った時点で動かせる状態でした。それでも、いきなり本番で有効にはしませんでした

代わりに採用したのが「シャドー運用」——自動化を裏で並走させ、人間の判断とどれだけ一致するかを記録するだけの期間を置く進め方です。この記事では、その考え方と、中小企業がそのまま真似できる段階設計を紹介します。

なぜ「いきなり自動」にしないのか

AIの仕訳分類は、そこそこの精度で当たります。ただ、経理でまずいのは「だいたい合っている」状態です。

  • 間違った仕訳がそのまま帳簿に残る
  • 気づくのは月末や決算期で、遡って直す手戻りが大きい
  • 一度事故が起きると、現場が自動化そのものを信用しなくなる

つまり経理自動化のリスクは、**精度の低さそのものより「間違いに気づくのが遅いこと」**にあります。だから最初にやるべきは、精度を上げる工夫ではなく、精度を測る仕組みを作ることでした。

判断のコツ:AIの精度を「信じる」のではなく、「測ってから任せる」。この順番を逆にすると、あとから信頼を取り戻すコストのほうが高くつきます。

シャドー運用とは:自動化を「裏で並走」させる

シャドー運用の中身はシンプルです。仕訳が発生したら、AIは通常どおり分類を行います。ただし、その結果を登録はしません。記録だけしておきます。

一方で、人間はこれまでどおり自分で確認して承認します。あとから両者を突き合わせ、AIの分類と人間の承認結果が一致していたかどうかを記録に残していきます。

重要なのは、自動登録のコード自体は書いてあるが、設定ファイルで休眠させているという状態にしたことです。「まだ作っていない」のではなく「作ってあるが止めてある」。この違いが、解禁の判断をスムーズにします。

解禁は、担当者の気分や口約束ではなく、**変更履歴が残る形(プルリクエスト)**で行います。「いつ、誰の判断で、どの範囲を自動にしたか」が後から追えることが、会計業務では効いてきます。

昇格の条件を「数値」で決めておく

シャドー運用で一番大事なのは、どうなったら自動を解禁するのかを、事前に数値で決めておくことです。ここを曖昧にすると、いつまでも「まだ不安だから」と止まり続けるか、逆に「もう大丈夫そう」で早すぎる解禁をしてしまいます。

RENOYの自社経理では、次の2つを条件にしました。

  • 一致率が継続的に100%であること(一時的にではなく、続いていること)
  • 税理士のレビューを通っていること

会計処理は最終的に専門家の目を通る領域です。だから社内の数値だけで完結させず、外部の専門家の確認をゲートに含める設計にしています。

自動化のレベルを段階で定義する

もう一つやったのは、自動化を「オンかオフ」の二択にしないことです。3段階のレベルを定義し、それぞれの昇格条件を明文化しました

レベル状態昇格の条件
L1全件を人間が承認(AIは裏で並走)一致率が継続的に100%/税理士レビュー通過
L2定型パターンのみ自動、それ以外は人間承認対象範囲で同様に一致率を維持
L3自動の範囲を段階的に拡大範囲ごとに同じ基準で判定

ポイントは、L2で「定型パターンのみ」に絞ったことです。毎月同じ相手・同じ内容で発生する取引は、判断がぶれません。逆に、内容が毎回変わる取引は人間が見ます。全部を自動にするのではなく、確実な部分から自動にする——これが現実的な進め方です。

そして各レベルの昇格を、担当者の裁量ではなく数値の条件に紐づけておく。こうすると「まだ自動にしていない」ことが不作為ではなく、基準を満たしていないという説明可能な状態になります。

中小企業がこの進め方を使うときの3ステップ

自社でも顧客案件でも、私たちはこの順番で進めています。

  1. 裏で並走させる:自動処理は作るが、登録・送信などの「確定させる動作」は止めておく。設定で切り替えられる形にしておくのがコツです。
  2. 一致率を測る:AIの判断と人間の判断を突き合わせて記録します。ここで初めて「うちの業務でどれくらい当たるのか」が数字になります。
  3. 条件を満たせば解禁:事前に決めた基準(一致率・専門家レビューなど)を満たしたら、範囲を限定して自動に切り替えます。履歴が残る形で行います。

この進め方の副産物として、「どのパターンで外すのか」がデータで見えるという利点もあります。並走期間中に出た不一致は、そのまま改善の材料になります。いきなり本番有効化すると、この情報は「事故」という形でしか手に入りません。

どの業務にシャドー運用が必要か

すべての自動化にここまでやる必要はありません。目安は「間違いが後から取り返せるか」です。

業務慎重さ進め方の目安
仕訳・会計処理シャドー運用+専門家レビュー
請求書の発行・送付シャドー運用(下書き止まりで並走)
社内向けレポートの集計数回の目視確認で足りることが多い
ファイルの自動保存・整理そのまま自動でよい

外部に出るもの・お金が動くもの・後から遡って直しにくいものほど、測る期間を先に置く価値が高くなります。

まとめ

  • 経理・請求などミスが許されない業務の自動化は、「作る」より**「信頼できると証明する」プロセスが本体**
  • 自動処理は作っておき、確定させる動作だけ休眠させて裏で並走させる(シャドー運用)
  • 昇格の条件を数値で明文化する(一致率、専門家レビューなど)。解禁は履歴が残る形で行う
  • 自動化はオンかオフではなく段階で定義する。定型パターンから始めて範囲を広げる
  • AIの精度を信じるのではなく、測ってから任せる

RENOYでは、この進め方を自社の経理業務で実践し、そのまま顧客の自動化案件にも適用しています。「AIに任せたいが、間違ったら困る業務だから踏み切れない」という段階のご相談も歓迎です。まずはお気軽に無料個別相談(オンライン・60分)をご利用ください。サービス内容をまとめた資料は資料請求からご覧いただけます。

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