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「月次決算の締めに半月かかる」というご相談は、経理の人数が限られている会社ほどよく伺います。数字が出るのが翌月の半ばでは、経営判断にはもう間に合いません。
ただ、この状態を「経理が遅い」と捉えると解決しません。私たちが自社の経理と支援案件で最初にやるのは、月次決算を工程に分解することです。分けてみると、時間を食っているのは判断の難しい仕事ではなく、ほとんどが転記と突合という単純作業だと分かります。
この記事では、月次決算をどう工程分解し、GAS(Google Apps Script)でどこまで自動化できるかを整理します。
この記事の結論
- 月次決算が長引く原因の大半は転記と突合である
- 工程分解すれば7割程度は自動化の対象になる
- 着手順は難易度ではなく繰り返し回数の多い工程から
月次決算が15日かかる原因は「転記と突合」
月次決算を「経理の仕事」とひとかたまりで見ていると、どこを削れるか分かりません。実際には、性質のまったく違う作業が混ざっています。
大きく分けると、データ収集、突合、仕訳起票、チェック、報告資料作成の5工程です。このうち人の判断が必要なのはチェックと一部の仕訳起票だけで、残りは手順が決まった作業です。それなのに時間の大半を占めているのは、判断ではなく作業のほうです。
各システムから数字を集め、明細と残高を突き合わせ、同じ数字を別の表に写す——この繰り返しが、半月という時間の正体です。
GASで自動化できる工程・できない工程の見分け方
見分け方はシンプルで、その工程に人の判断が入るかどうかだけです。判断が入らない工程は、手順を書けばそのまま自動化できます。
| 工程 | 中身 | 性質 | GASでの扱い |
|---|---|---|---|
| データ収集 | 各システム・シートから集める | 単純作業 | 自動化 |
| 突合 | 明細と残高を突き合わせる | 単純作業 | 自動化 |
| 仕訳起票 | 定型パターンの起票 | ほぼ単純作業 | 自動化(例外は人) |
| チェック・承認 | 妥当性の判断 | 判断 | 人に残す |
| 報告資料作成 | 集計・表の更新 | 単純作業 | 自動化 |
GASで組むのは、この表の「自動化」の部分、つまり転記と突合です。判断が残る工程は無理に取り込まず、人の承認を前に置いたままにします。自動化の目的は人の判断をなくすことではなく、判断にたどり着くまでの作業時間を削ることだからです。
この仕分けをすると、作業時間ベースで7割程度は自動化の対象に入ります。逆に言えば、残り3割は自動化しないと最初に決めておく。ここを曖昧にしたまま「全部自動で」と走ると、例外処理の作り込みで開発が止まります。
月次決算を自動化する手順:並走期間を置く
もう一つ大事なのが進め方です。いきなり自動の結果を本番の数字として採用しないこと。私たちは必ず、次の順序で進めます。
- 工程を分解する:5工程に割り、どこが判断でどこが作業かを仕分ける
- 転記と突合を組む:繰り返し回数の多い工程から着手する
- 並走させる:「自動ならこう処理した」という結果を出力させ、人が出した結果と突き合わせる
- 切り替える:差分が出なくなったら、自動の結果を正として採用する
3の並走期間が、実は一番の安全弁です。経理は間違えられない業務なので、「動いたから任せる」ではなく「同じ答えが出ることを確認してから任せる」順序にします。差分が出た箇所は、たいてい仕様の抜けか、現場の暗黙ルールが見つかった合図です。
自動化の順番の選び方:難易度ではなく繰り返し回数
どの工程から手をつけるか迷ったら、繰り返し回数の多い順で選んでください。作りやすさで選びがちですが、それでは効果が出ません。
月に1回しか発生しない複雑な処理を自動化しても、削れるのは1回分です。一方、毎月何十回と発生する転記や突合は、1件あたりが数分でも積み上がると大きな時間になります。同じ開発量で削れる時間が桁違いになるのは、ほぼ後者です。
効果が早く目に見えると、現場も「次はここを」と言い出します。月次決算の自動化は一度で終わる話ではないので、この流れを作れるかどうかが続くかどうかを決めます。
実案件(匿名)での気づき
実案件(匿名)でも、最初のご相談は「締めが遅い」でした。工程を分解してみると、ボトルネックは仕訳の判断ではなく、複数の表に同じ数字を写す作業と、突合のために数字を並べ替える作業でした。
ここで重要なのは、見た目の作業を速くするのではなく、データを一箇所に集めて自動で突き合わせる形に変えたことです。転記が消えれば、転記由来のミスも同時に消えます。チェックと承認は従来どおり人が行う設計のままにしたので、現場の手順も大きくは変わりませんでした。
なお、GASには1回の処理時間に上限があるなどの制約があります。件数が多い場合は処理を分割する設計にします(仕様は変わるため、最新は公式で確認してください)。
よくある質問
Q. 月次決算はどこまでGASで自動化できますか? 工程を分けると転記と突合といった単純作業が大半を占め、実務上は7割程度が自動化の対象になります。金額の妥当性判断や最終承認は人が担う前提で設計するのが基本です。
Q. いきなり全自動にしても大丈夫ですか? おすすめしません。まずは「自動ならこう処理した」という結果を出力させ、人が行った処理と突き合わせる並走期間を置きます。差分が出なくなってから自動の結果を正として採用します。
Q. どの工程から自動化を始めればいいですか? 難易度ではなく繰り返し回数の多さで選びます。毎月何十回と発生する転記や突合から着手すると、同じ開発量でも削減できる時間が大きく、効果が早く目に見える形で出ます。
まとめ
- 月次決算が長引く原因は判断ではなく、転記と突合という単純作業にある
- 5工程に分解し、判断が入らない工程だけを自動化すれば7割程度が対象になる
- 進め方は、自動の結果と人の結果を並走させてから切り替える
- 着手順は難易度ではなく、繰り返し回数の多い工程から
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